

すみませんが、ちょっとだけ私のこだわりを言わせて下さい。
我々ストーブ屋は一般的に『ストーブ屋』と名乗っていますが、実はその仕事の内容から、『エントツ屋』が正しいのではと考えることがよくあります。
ストーブは決して安いものではなく、フルセットで100万を超えるのが一般的ですが、その金額の半分以上はエントツに係っています。別ページに書いている通り、断熱エントツを使う必要性があるからですが、『安いエントツを使えば安くできるじゃないか。』とおっしゃる方もいます。 その通りです。ですが本来その場所に使うべきではない安い部材を使って、安価に出来るということと、恒久的に満足できるものに仕上がるかどうかは、別次元の問題です。
エントツは車で例えるとエンジンであり、車体がいくら良くても、エンジンがそれにあったものでなければ、キチンとした働きはしないのです。
ストーブ購入は、時には長い間の夢であったり、色々な思いがこもったものであると感じる事が多く、その思いに対して安いだけの設計や施工は、ある意味で裏切りであろうと考えます。
エントツを繋ぐだけなら非常に簡単です。誰でもできると言ってもいいでしょう。しかし10年後、20年後にも当たり前に安心して使うことができる設計・施工はそのショップの考え方や経験に基ずくものであろうと考えています。
技術は失敗を経験して先に進むものであり、失敗はつきものではありますが、『ストーブ屋』の仕事は裸火を扱う仕事です。
『失敗は保険でまかなえばいいんだよ』といった人もいましたが、『ストーブ屋』の失敗は許されるものではないのではないでしょうか。金で償えない損失もありえる仕事です。
またそこまでの失敗ではなくても、毎年使う薪の使用量も大きく変わってきたり、または使用が難しくて・・・と言うような設計では、ランニングコストや労働量の面で多大な負荷がかかってきます。
お見積もりは、なぜその部材をそこに使うのかまでキチンと説明できることが必要です。そのうえで、比較検討して下さい。
さて、もう一方では『ストーブ屋』として薪ストーブそのもののミスチョイスがよく聞かれるのが残念です。
『使い方が難しくてよく分からない・・・・・・』 『カタログデータより暖かくないようだ・・・・・』 『こんなに頻繁に壊れるの??』
カタログは良いところしか書いてません!!良く調べてからでも遅くはないですよ。
カタログデータの最大出力は通常使用ではまず出ないと思って下さい。最大出力は薪の持っているエネルギー量と1時間当たりの消費量と熱効率の掛け算ですから、薪自体が良くない(乾燥度が低い)ことや常に目いっぱい薪を入れて使うなどの乱暴な使用は通常はしない事、また煙突の施工などのマイナス点を引いて考えなければなりません。
ですから暖房能力の指標となるのは定格出力です。これはだいたい信用できる数値と考えていいのではないでしょうか。定格主力表示がないものはだいたい最大出力の70%程度と考えればよいのではないでしょうか。(外装の種類や厚みなどで変わりますのであくまで目安です)
例えば定格出力が8,000kcalで熱効率が75%の場合、部屋を温めるために出てくる熱カロリーは6,000kcalです。最高出力が
12,000kcalの表示でも、実際の暖房用の熱はこの程度にとどまりますのでご注意ください。
ただし、ヨーロッパ製品とアメリカ製品では出力検査方式が異なり、その表示に大きな差があります。例えばヨツールのF600は最大出力が10,320kcalですがUSA基準では20,538kcalとなり、実に2倍!!!もの違いです。この様に約1.3〜2倍の出力表示差があるので、充分に気を付けないと【寒い!!】となりかねませんし、オーバーユースによりパーツ交換が多くなる事もあります。
また一方であまり重要と捉えられていませんが、最低出力も重要な点です。特に市街地で使用する場合、煙の臭いなどの問題と直結する数字です。要は完全燃焼させられる最低の出力です。
岩手県の断熱基準は厳しいので、最近の住宅はすごく良くなっています。盛岡近郊で室外温度が5℃で室温を22℃とし、50uの継続暖房をする場合に必要なカロリー数は約2,000kal程度ですが、だいたいのストーブは最低出力がこれを大きく上回っています。中には最低出力6,000kcalなんて機種もあるんです。
だから暑すぎるので、空気を絞り、不完全燃焼させて出力を抑えるような使用をしているように見受けられます。不完全燃焼は排気温度の低下であり、それは外ではにおいになります。
薪の乾燥が1番の要因である事は間違いありませんが、この最低出力もキーポイントであることをお忘れなく!!
ネットなどでは市街地ユースの一番のトラブルになっているようですが、大きすぎないストーブを選ばれることも重要です。
大きすぎるものは出力を絞れないので、【大は小を兼ねない】を覚えておいて下さい。
使い方の難しさは人それぞれで、6速ミッションのマニュアル車が良い人もいれば、オートマ車が楽で良い人もいるでしょう。
弊社ではオートマ車をお勧めします。ぜひそんなストーブを見て下さい。『目からうろこ』とまで言われたこともあります。
私は薪ストーブが大好きです。その持っているパフォーマンスだけではない魅力があります。10年後にはそのストーブが使われていないという事がありませんように、良く考えてのご購入を。
決して安い買い物ではありませんので。